「これからは市場を創造できない企業は成長できない」、これはユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井社長がおっしゃっている言葉ですが、短い言葉の中にこれからの時代のビジネスモデルの真髄が凝縮されています。
戦後の日本の高度成長を支えたのが、団塊の世代に象徴される人口増加であったことは間違いありませんし、社会資本の整備も行き届いていませんでしたから、買いたいもの、手に入れたいものがたくさんある時代でした。たくさんの人がいて、たくさんのものをほしがっていたのですから、高度成長するのが当たり前です。
そして高度成長時代というのは、「いい思いをする競争の時代」だとも言い換えられます。つまりどうせ給与も上がるし、いつかは結婚もするし、子供も持てるだろう。家だっていつかは買える。出来るだけ早くそれを実現したいと、みんなが競争していた時代だったということです。最終的には良くなる事を誰もが疑っていませんでした。
しかしこれからは違います。
デフレの世の中とは整理すると以下のようになります。
この循環がデフレの社会ですが、この流れを断ち切るには以下の2つしかありません。
でもどう見てもこれは厳しい選択です。アジアの国々が日本の平均給与の追いつくにはまだまだ時間が掛かりますし、現実には日本人の給与が大幅に下がるというのが予想される現象ですので、大変厳しい選択です。
また供給を上回る需要とは、人口増加社会が前提であり、人口減少、世界一の高齢化に直面している日本としては、悲しい夢物語でしか有りません。となるとどうやってこれからのデフレ時代を生き抜いていくのか。不動産業におけるその解を、提示しようとしているのが本書です。
社会が成長しない中で、収益を確保し、さらにそれを伸ばすための解はずばり「生産性の向上」。そしてその伸び代が日本で一番大きな業界が、不動産業界だと認識してください。
右肩上がりの社会では、ほしがっている消費者がたくさんいます。たくさんいたからそこに広告を打てば、反響がありました。しかしチラシの効果がなくなって既に数年もたっています。それでも広告を削減する勇気がないために、せっかくの内部留保を取り崩して広告を打ち続ける不動産会社。
チラシがならないのならホームページだとばかりに、ホームページを作り反響を待っている不動産会社。
衣食住に関わる産業は、不景気でも一定の市場規模を維持できるはずなのに、と一人で悩んでいる不動産会社の社長。
みんな間違っています。インターネットは新しい広告媒体では有りません。インターネット時代とは、リピートと紹介によって成長する世界であり、反響営業という従来の不動産業界の常識を突き崩すコミュニケーションツールなのです。
賃貸住宅に住んでいるお客様は平均3年半以内に、引越しをされています。家を建てたり買ったりしているお客様も、その50%は10年以内にまた買っています。
今年100件契約をした賃貸不動産会社は、3年後にまた100件契約できる種をまいたと考えるべきです。過去10年間で100件契約できた不動産会社は、これからの10年で50件契約できる種をまいたのです。
インターネットを駆使し、今日のお客様と生涯にわたるコミュニケーションをとることが出来たら、従来の不動産会社にはない生産性の向上が可能になります。そしてそれは我々の8年間の不動産会社とのかかわりの中で証明されてもいます。
デフレ時代とは、右肩上がりの「いい思いをする競争の時代」と違い、生き残り合戦です。安穏として流れに任せていては生き残ることは不可能です。本書の事例を参考にしてこれからの厳しい時代に生き残るだけでなく、成長していく不動産会社がたくさん出てくることを心から望んでいます。それが消費者のためでもあるのです。